波の音で目が覚めた。光が眩しい。空は高く、鳥が飛び交っていた。潮の匂いがした。濡れた衣服のせいで寒気が襲う。足元では波が寄せては返す。那岐は手首に結ばれた紐を見つめていた。思考は巡らない。涙が頬を伝う。那岐は生きていた。しっかりと結んだはずの紐の先には誰もいなかった。

「―――……」

立ち上がる力はない。散らばった感情は那岐を痛めつける。夜が明ける。今日が目覚める。黄金の美しい朝焼け。那岐は一人取り残されたことを知って、泣いた。