R−18 ※苦手な方、お戻りください。 零れ落ちる涙の先は
膝に預けるようにして置いた肘の先には、祈るように組まれた指がある。 まるで何かに耐えるように静かに唇を噛み締めていた。 視線は確かにそこを向いていて… けれど、心がこの場にないことは明白であった。 いったい、あなたの視線の先はどこを見ているのか…… 遠く、今は届かぬほど向こうに、約束の地に、あなたは思いを馳せているのだろうか。
こんな時のジョミーの思念は固く閉ざされていて、 まるで彼の周りが一気に闇に溶け込んでしまったかのような錯覚に陥る。 最近の闇は特に深い。 ナスカでジョミーは変わった。 ブルーとの約束が彼を変えた。 背負うものの重さに、目的の為に払う大きな犠牲に、彼の心は悲鳴を上げている。 そんな自身の思いを自覚しながらも、気づかないふりでやりすごす。 そして、何度も何度も心の涙を流すのだ。 それが、遠くを見つめるようにして一人、青の間で過ごすこの時。
只一人の愛しい人、僕の全て、僕の生きる意味。 静かな、けれど力い想いを込めたトォニィの呼びかけに、 ジョミーは振り向くことはなかった。 そんなジョミーの姿にトォニィは耐え切れず、すぐさま彼の近くへとテレポートする。 「グラン・パ、僕を見て! どうして……どうしてこんなに近くにいるのに、あなたは僕を見てくれないんだ……っ!!」 ジョミーの前に膝立ち、彼の頬に両手をそっと伸ばして俯く視線を自分へと向ける。 「あなたの目に、僕は映らないの?」 そのまま頬のラインをゆっくりなぞるように辿り、 そっと首筋を撫でるようにしながらその後ろへと腕を回す。 静かに抱きしめれば、すっぽりと腕の中へと収まってしまう身体に、更に愛おしさが増す。 まるで、壊れそうに儚い。 少しでも力をいれればすぐにでもひび割れてしまいそうな…… 温かな、それでいてどこか冷え切ってしまったような身体を、 ゆっくりと自分の熱で包み込む。 「離せ…トォニィ」 一瞬閉じ、再び開かれた鮮やかなエメラルドの瞳には、静かな強い意志が宿っていた。 組んでいた指はとうに離され、強い力で目の前のトォニィを押し返す。 そんなジョミーの動きに、トォニィは抱きしめる腕に更に力を込めた。 ジョミーの肩に顔をうずめながら、自分の中の想いを、直接思念で送る。 言葉でいくら言っても、彼はまったく聞き入れてはくれない。 僕の心の声をそのままあなたに届けられるなら…… 『あなたの…あなたの心はこんなにも泣いているのに……っ』 それでも、ジョミーは自身の心の声に耳を貸さない。 「僕が…、僕があなたの哀しみを、孤独を。一緒に背負うから……っ」 小さく搾り出すように囁いたトォニィの言葉に、ジョミーは明らかに拒絶の色を見せた。 「僕は泣いてなどいない。早く行け……今はこんな問答に割く時間は無い!」 トォニィの腕を無理矢理外すと、ジョミーは視線も合わさぬままに冷たく言い放つ。 そんなジョミーの姿に、トォニィは今にも泣き出しそうな、 それでいてどこか狂気を秘めた表情を浮かべた。 「あなたはいつもそうだ。自身の心の声に蓋をする。 そして……あの人の名残に縋りつくようにして自分を慰める」 明らかに変わったトォニィの雰囲気に、流石にジョミーもいぶかしげな視線を向けようとした。 が、その間もなく強い力でそのまま後ろのベットへと押さえつけられる。 不意のことに一瞬ジョミーの抵抗が遅れた。 そして、トォニィにはこの間で十分彼の動きを封じることができた。 サイオンを巧みに使い、腕を拘束する力を強める。 「僕があなたの本当の心を気づかせてあげるよ」 トォニィはジョミーを上から押さえつけたまま、そっと身をかがめ、静かに耳元で囁いた。 言いながらマントを留めている部分を外し、流れるようにインナーのファスナーへと手を伸ばす。 「やめろ……やめるんだトォニィ!」 トォニィに予想以上に強い力で両手を押さえつけられながらも、 その押さえる腕を振り払うために手に力を込めながら、強い口調で言う。 「僕の心に触れることは許さない。何人もだ……っ」 ジョミーのその言葉に、トォニィは押さえつけていた腕の力を抜いた。 脱がしかけていた手をジョミーの頬へと再び戻し、 まるで壊れ物を扱うように優しく、そっと撫でるように手を滑らせる。 「ブルーもなの?」 表情は無邪気な子供のそのままで、まるで本当に不思議なことのように問いかける。 その言葉に、今まで強い意志を映していた瞳の色が明らかに翳りを帯びた。 ブルーの名を出した途端に走る動揺の色に、トォニィは激しい嫉妬を覚えた。 「嫌なら、本気で抵抗してよ…グラン・パ……」 先ほどまで自分の腕を解こうと力の篭っていた手に、既にその意志はない。 「僕は本気だよっ……!」 身体から力を抜いてしまったジョミーを前に、トォニィはその想いを知らしめるように、 下ろしかけていたファスナーを全開にし、邪魔な衣服を全て剥いでいく。 そんなトォニィの動きにも、ジョミーの方は一切の抵抗の力を加えることもなく、 静かにその状態を見つめていた。 「抵抗してよ……っ」 喉の奥から搾り出すようにして紡がれた言葉に、ジョミーは小さく笑った。 今度はジョミーの手が自分の上にいるトォニィの頬へと伸ばされる。 「好きにすれば良いさ。おまえの気のすむように。 でも僕の心には触れられない。それでも良いなら、抱け……」 その言葉と同時に、トォニィはジョミーの全ての衣服を脱がし終えた。 日に当たることの少ない、真っ白な肌が現れる。 自分の下に組み敷いたその神聖なまでの美しさに、トォニィはしばし見惚れていた。
扇情的なその光景に静かに息を飲むと、そのまま淡く色付く胸の飾りへと指を這わせる。 右手でそっと撫でるような愛撫を繰り返しながら、もう一つの飾りにも静かに舌を伸ばす。 軽く啄ばみ、強く吸い上げる。 「……っ、………」 一瞬、ジョミーのからだが痙攣したように引きつった。 「ジョミー、ここが感じるの?」 ゆっくりと舌を這わしながら、次第に紅く熟れたようになる飾りに更に刺激を与える。 トォニィはジョミーの反応を見ながら、ゆっくりと顔を下へと移動させていく。 脇腹から腰の辺りを何度か往復するように甘噛めば、今度は確かな嬌声が上がった。 「…ぁ……ふ……や、ぁ……っ」 その声に誘われるように、強く吸い上げる。 跳ねる腰を押さえるようにして固定すると、両膝を抱えるようにしてゆっくりと左右に割っていった。 今までの刺激で、少しだけ反応しかけていたそこは、 見られるという刺激によって、更にその反応を明らかにした。 「ジョミー、ちゃんと感じてくれてたんだ」 そんな様子を見て、トォニィは嬉しそうな声を上げてジョミーを見上げる。 紅く上気した頬、熱で潤んだ瞳。 そんな愛しい人の姿を見るだけで、トオニィは自身が高ぶっていくのを感じる。 そのままそっと上体を倒し、静かにその存在を主張し始めたそれに舌を絡める。 湿った感触で辿るように形をなぞられ、熱いもので包まれれば、 ジョミーもトォニィの頭を押し、形ばかりにも抵抗を示す。 その舌の動きを感じるたびに身体の力は抜け、 中心から感じる切なさと快感から意識が遠のきそうになる。 しかしこの快感を与えているのがトォニィであるという現実が、 やはりジョミーの意識をこちら側に縛り付ける。
ゆっくりと、丹念に、トォニィの舌が秘められた場所を解きほぐしていく。 ある程度ぬらされた段階で、トォニィの長く綺麗な指が静かに入ってきた。 急な異物感に、思わず身体を硬くする。 それが分かったように、指をゆっくりと入れながら、 トォニィは再び紅く色づいた胸元の飾りへと舌を伸ばした。 「ふ……っ、ぁ…………」 その刺激によって少しずつジョミーの身体から力が抜け始めると、 2本、3本…と、中の指の数を増やしていった。 丁寧にほぐし何度も出し入れを繰り返していれば、中のある部分を触った瞬間、 ジョミーの身体が思いっきり跳ねた。 「ひゃ……っ、ぁ……、や……っ、そこっ……」 ようやく見つけた感じる場所に、トォニィは指を抜くと、 自分のモノを取り出し、その欲望をゆっくりとジョミーの中へと埋め込んでいった。 「…………っ、……ぁあっ」 身体が押しつぶされそうな圧迫感。 その衝撃をジョミーは必死に唇を噛んで押し殺した。 身体が揺さぶられる。 先ほど暴かれた場所に意図的にその中心を押し付けられ、 突き上げられる度に、身体が快楽に震える。 それでもこれ以上声を立てまいと必死に声を殺そうとするジョミーを見て、 トォニィは更にその動きを激しくする。 「っ……ぁ、ふ……っ」 それでも噛み殺せない声が、その薄く開いた唇から零れだす。 「グラン・パ……声聞かせてよ」 濡れて甘く掠れた声が、ジョミーの耳元で囁かれる。 送り込まれた声の熱っぽさに、ギリギリの快感をやり過ごしていたジョミーの背が震える。 次の瞬間、身体の中心をなんども抉るように貫かれる。 「ぁあっ……、トォ…ニ…ィ……もぅ、っ……ぃ…」 快感で飛びそうになる意識を、必死に呼び戻す。 目の前で切なそうに自分を見つめる眼と合えば、ジョミーはゆっくりとその頭を引き寄せた。 「僕も……、一緒に……っ」 トォニィが息詰めたのを、ジョミーは耳元で感じた。 ジョミーは背を大きくしならせる。 次の瞬間、2人の熱は同時に弾けた。 静かに、自分の中の熱を感じながら、ジョミーはその意識を手放した。
一瞬だけトォニィの中へと流れ込んだジョミーの思念。 その言葉に込められた想いの全てを、僕は受けとってしまった。
ジョミーの目元に残る生理的に浮かんだ涙。 その透明な雫をそっと指で掬い取り、そのまま静かに下ろした手でその頬をゆっくり撫でる。 「僕の腕の中では、あなたは泣けないんだね……っ。 あなたの心の涙は、僕には拭えないよ…………」 何度も、何度もその柔らかな頬に指を滑らす。 どれだけあなたのことを想おうとも、僕の想いはあなたに届かない。 でも、あなたの心の底からの愛情は、僕の中に入り込んだ。 そして、その慈しみの温かな愛情よりもさらに穏やかで切ないあの人への想いまで。 「ずるい人だ……これじゃ諦めがつかないよ」 泣いているような、笑っているような…… そんなどちらともいえない表情で目の前で眠る愛しい人へ声をかけると、 そっとその身をかがめ、薄く開く唇へと、触れるだけのキスを落とした。 『どうかあなたの心が壊れませんように……』 そんな願いを込めて、静かに、静かに口付ける。
ジョミーもトォニィも、その脳裏には同じ人が描かれていたことだろう。 穏やかに笑う白銀の髪の、意志の強い紅の瞳の美しき人を……
2007/10/15 |