音にならない言葉
思わず紡いでしまいそうになった言ノ葉を、僕は必死に押し殺した。 ブルーの力強い決意を秘めた瞳が、不安に揺れる僕の心を射抜く。 このまま彼に縋ることができるならばどれだけ楽であろうか… 子供のように喚いて引き止めても、彼はいつものように儚い笑みを浮かべながら おだやかな言葉で、けれど重い決意を込めて僕を宥めるのだろう。 あなたの代わりに僕が… 彼の瞳に宿る意志が、僕の言葉を遮る。
ミュウの長として、導く者として、彼の意志を継ぐ者なのだ。 まるで墓標のように、不気味な光を放ちながら宇宙に浮かぶメギドへと向う彼を 止める言葉を僕は持たない。 「絶対に生きて帰ってきて下さい」 この残酷な言葉で彼の行く先を縛ることなど… 絶対。 果たされることはないと分かる約束にも彼は頷く。 だから言えない。 長がなんたる者か、その身を持って最後の仕事を成そうとする彼の意志を縛り付 ける言葉など。 何度も…何度も開きかけた唇は、音を紡ぐ前に閉じられた。 唇をきつく噛みしめながら彼の姿を、想いを、強く心に刻み付ける。
メギドに背を向け、僕は赤き大地へと降り立つ。 彼との約束を。 一人でも多くの仲間を助け出すために…
2007/10/08
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